まずは母のことを少し書こうと思う。
普段は「お母さん」ではなく名前で「Y子さん」と呼んでいるので、
これからはいつものように Y子さんと呼ぶことにしよう。
昭和15年生まれ現在75歳。 今は車で5分ほどの所に、父と2人で住んでいる。
運動が好きで、手先も器用。 料理も上手で、いつも美味しいご飯を作ってくれた。
趣味で出かけることも多く、いつも元気いっぱいのおばあちゃんだった。(あ~過去形だわ)
洋服を買うのも大好きで、ピンクのジーパンなんかも着こなしちゃう人。
で、とっても気が強い負けず嫌いな人(笑)
そんなYさんの様子がなんだかヘンだと思ったのは、認知症と診断される1年ほど前だった。
父が膝の手術をしたので、姉と一緒に付き添いをした。
手術自体は内視鏡による簡単なもので、入院も1泊だけだったので付き添うほどでもなく、
Y子さんも全く付き添う気はないようだった。
でも誰か1人くらいは病院に居たほうがいいかな? そう思い姉を誘ってランチがてら出かけた。
ところがなぜか?この付き添いがY子さんの逆鱗に触れた。
「自分には内緒で、お父さんにばかり優しくする」
「私だけのけ者にするなんて、なんて冷たい娘たち・・・育て方が悪かった」
そう言って怒っていたらしい。
その頃は車で30分ほど離れた所に住んでいたY子さん。
だから会う機会も少なく、そんな事で怒っていたなんてすぐには気が付かなかった。
被害者意識が強くなり、「私は独りぼっち」と言う気持ちがどんどん増して行ったようだった。
そんなY子さんの気持ちの変化に気が付いたのは、それから2カ月ほど後。
陸上をやっている息子の大会があった夜、優勝した報告の電話をしたら、
「お母さんが今日、1日中競技場に居たから優勝したの知ってるよ。」と父から言われた
1日中競技場に居たのに、私にも息子にも全く声をかけることがないなんて・・・・尋常ではない。
普段の母からは想像もつかない行動だった。
慌てて会いに行き、すっかり卑屈になっている母を見て驚いた。
「誰も私の事なんて相手にしてくれない」 「私には友だちも居ないし、独りぼっちだ」
オマケに父の悪口(もはや愚痴なんてものではない)を延々と聞かされた。
「うつ病?」こんな母を見て、まずそう考えた。