軽度の学習障害(グレーゾーンよ)を持つ息子。
そんな息子の高校受験に頭を悩ませていた頃、「スポーツ推薦」の話を知った。
少しばかり足が速かった息子にその可能性があると知り、そこに一縷の望みをかける事にした。
問題は春の中体連陸上大会で県大会出場まで漕ぎ着ける事。
これが最大の難関・・・この成績が全てと言っても過言ではない。
実は息子はバスケット部に所属していた。
人数ギリギリの弱小バスケット部だったが皆とても仲が良く、
鬼コーチからのパワハラに耐えつつ、毎日の部活を一生懸命に頑張っていた。
そんな息子が陸上の大会に出たのは、バスケ以外に掛け持ちで駅伝部に入っていたからだ。
この地域は昔から駅伝が盛んな為、部活とは別に足の速い子を集めた駅伝部なるものが存在した。
小学校の頃はおデブで足も遅かった息子。マラソン大会はいつも後ろから5番目あたりだった。
でも中学でバスケ部に入り鬼コーチのスパルタ練習により、あっと言う間に二回りほど肉が落ちた。
その結果、実は足が速かったんだと言う事に気が付いたのだ。(皆ビックリ!)
初めはお呼びでなかった駅伝部に、中2になって入る事になった息子。
だから陸上でスポーツ推薦などと言う話は、本当に突然降って湧いた夢のような話だった。
でもバスケのスパルタ練習に加え、駅伝部の練習も熱血先生の指導によりとてもハードだ。
特に冬の時期は駅伝の大会が多く、息子の足はケガが増え疲労は蓄積した。
このままでは春の中体連時期にはどうなるか分からない。
どちらの大会も時期は重なるので、先生方がヒートアップするのは火を見るより明らかだ。
ケガをしてしまえばスポーツ推薦での受験はできなくなる。
自分の身は自分で守るしかないのだ・・・・それについては息子と何回も話し合った。
3年に進級する直前、バスケ部に新入部員が入ると言う情報を確認し息子はバスケ部を辞めた。
大好きなバスケ、仲良しの仲間と離れるのはとても辛かったに違いない。
それでも一般受験が難しい以上、そうせざるを得ないと本人が一番よく分かっていた。
鬼コーチにその話をしに行った息子を、私も部室の脇で待っていた。
私も一言挨拶をしよう思ったのだ。
それを知らない鬼コーチは部室から出る息子の背中に向かってこう叫んだ。
「誰のおかげで足が速くなったか分かってるのか!!調子に乗んなよ!!」と。
弱小バスケ部を捨てて、陸上で目立ちたいと思っているように見えたのだろう。
バスケ部の保護者の中でも、なんとなく冷ややかな目で息子や私を見る方もいた。
3年生は夏前には部活を引退する。それまでたった3ヶ月・・・
それなのになぜ今辞めるのか?何を考えているのか?風当たりはそれなりに強かった。
それでも息子は黙々と陸上の練習に励んだ。
一般受験も頭に置いて勉強だって一生懸命やっていた。
そして推薦に少しでも有利になるようにと、生徒会の副会長にも立候補し当選した。
何もかもが高校に行く事を中心に回っていた。
そんな息子のために私も自分が出来る事をした。
部活を途中で変更する事が、推薦を貰うのに不利になってはいけないと思い、
こともあろうに校長先生に直接確認をしに行った。
そしてこんな理由で何としてもスポーツ推薦を頂きたいのです!とお願いまでしてきた。
校長先生はきちんと話を聞いて下さったけれど、ちゃんと担任の先生も同席させておられた。
担任の先生を飛ばしてしまいとても申し訳ないことをしてしまった。
今思えば何て厚かましい母親だったんだろうと恥ずかしくなる。
でも自分に出来ることを一生懸命にやっている息子の為なら、出来ることはなんでもしたかった。
そんな春、中体連の市内大会を目前に控えた大事な時期に息子の足が悲鳴をあげた。
腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)の炎症。
痛みが無くなるまで1ヶ月は走らないようお医者さんに言われてしまった。
最悪な状況だった・・・