認知症の薬を止め、すっかりストレスから解放されたY子さん(母)は
少し元気を取り戻した。
物忘れは相変わらずあるけれど、イライラと攻撃的な態度が減り
ちょっと落ち着いた様子。
父との関係も少し穏やかになった。
やはり父が薬を止めさせてくれた事が、Y子さんにとって何より有り難かったようだ。
薬を止めてどうなる?と心配したけれど、なんとなくいい方向に向かっているかも?
ただ、ぼ~っとする時間が無くなった分
Y子さんは自分の物忘れが気になって仕方ない、という素振りを見せることが多くなった。
ずっと前の事は覚えていても、昨日の事なんかは意外に忘れてる事が多い。
だから「昨日の話だけどね・・・」なんて話し方をすると
「え?昨日そんな話した?」って怯えたような表情を見せる事も多くなった。
そして、忘れてる自分にショックを受けるようだった。
そんな表情を見るのが可哀想なので
できるだけ話をする時は気を使うようになった。
「もう話したっけ??」とか「まだ話してなかったかもしれないけど」なんて
まず、こちらが言ってないかもしれない・・って前置きをしながら話をするようにしてみた。
すると「ううん、聞いてないよ」と気楽に話せるようだった。
それでも忘れてる自分が気になって仕方ないY子さんは
なんでもメモ書きするようになった。
広告の裏紙やカレンダー、バッグには手帳も入れてありとあらゆる事を書いていた。
忘れないように必死に頑張っていた。
物忘れと認知症の違いは
忘れていたけど話を聞いて「そうだったね~」と思い出せるのが物忘れ。
話を聞いても、全く思い出せない・・・スッポリ記憶が抜けてるのが認知症のもの忘れと聞いた。
Y子さんは明らかにスッポリ記憶が抜け落ちている事も多い。
スッポリ記憶が抜けるって怖いよね・・・
きっと凄く不安なんだろうと思う。
認知症と診断を受けた事は、Y子さんの記憶からスッポリ抜け落ちている。
だから「なんでこんなに忘れるんだろう?もしかしてボケて来た?」
そう考えて不安でいっぱいになっているようだった。
薬のストレスからは解放されたけれど、また違うストレスに悩まされてるように見えるY子さん。
「このくらいの年齢になると、忘れている事が多いって皆そう言うよ~」
その言葉をしょっちゅう口にするY子さん。
自分にそう言い聞かせてるように見えた。
「忘れてる自分。」
毎日その現実と向き合っていたY子さん。
ストレスはまた少しづづ蓄積していった。