引っ越し先のリフォームが本格的に始まった夏。
初日は楽しく襖を張り替えたり、コルクマットを敷いたりをしながら、
「漆喰の壁も汚いね~!なんとかしたいね!」などとノンビリした雰囲気でで幕を開けた。
当初の予定では2週間ほどでリフォームを終え、早々に引っ越しをするはずだった。
ところがだ!
畳替を始めたら、シロアリさんが住んでおられる事が判明。(築60年以上だしね)
急遽、シロアリ駆除やボロボロになっていた基礎部分の補修
それに伴う床の張り替えなどなどなど、多くの追加作業が必要になってしまった。
もちろん自力では出来ない事が多いので、工務店に頼むことになる。
「今すぐお願いします!!」と言う訳にもいかず、引っ越しの日程はズルズル延びて行く。
引っ越しを決めたY子さん。
決めた途端に荷物をまとめ、何でもかんでも玄関に運び出し積んで行く。
決めた以上は早く越したくて仕方がないらしい。
毎日のように父に「いつ引っ越すの?」「まだ引っ越さないの?」と詰め寄る。
そして日程も決まっていないのに、自治会の役員さんやご近所さんに
「引っ越します♪」と連絡まで入れていた。
おい!おい!おい!
まだ見通し立たないんですけど・・・
どうやら認知症は「待つ事」「我慢する事」をY子さんから奪ってしまったようだ。
一方、毎日のようにY子さんから「早く引っ越そう!」と詰め寄られ
ウンザリしているはずの父なのだが、
これまた拘りが強い頑固オヤジなので、リフォームが一向に終わらない。
最初は住めればいいね!と言っていたのに
廊下に新しいフローリングが貼られ、畳が新しくなると
他の部分が急にみすぼらしく見えたのだろう、リフォームの追加工事が
どんどんどんどん増えていく。
廊下がキレイになったから、繋がってるキッチンの床も張り替えよう!
どうせならトイレと洗面所も新しく♪
サッシも入れ替えて、お風呂もリフォーム。
結局は初日に貼った襖もコルクマットも、業者さんの手により
新しいモノに入れ替えられ、生まれ変わっていた。(なんだそりゃ~!!)
あっちもこっちも後から追加になるので、手間も時間も費用もかかる。
こんな事なら、最初から業者入れれば良かったのにね・・・・
引っ越しの見通しが立たず、イライラしているY子さん。
業者さんがバタバタ作業をする家に、毎日のように来て「居場所がない」と言う。
それなら実家で荷物の整理でもすればいいのに、そう言うと
「ご近所には挨拶したから、家に居られない!!」と仰る。
でも実家に居たくないのは、荷造りが出来ないのも原因だったようだ。
認知症のため上手く整理が出来ず、何をどうしたらいいのか分からないらしい。
紙袋に手あたりしだいに物を突っ込んで、玄関に運んで積み上げる。
あっという間に玄関は物凄い状態になっていた。
もう置くところがない。
毎日のようにY子さんは「この荷物を運ぶ!!」と言う。
でもリフォーム中の家には、そんな荷物を置く場所はもちろんない。
それにゴミの様な物まで突っ込まれている紙袋を、新しい家に運びたくはない。
この際だから、実家で不用品は整理して引っ越そうと思っていたので
「一緒に荷造りしよう!手伝うよ!」と言っても、Y子さんは頑として受け入れない。
「だってアンタたち、私の要る物も捨てようって言うから!」と・・・
だってさ、使用したジップロックとか、山ほどの針金のハンガーなんて要らんでしょ~
欠けたお茶碗も、毛玉がついた古いセータもどれもこれも絶対に捨てないと言う。
どれも大事なものだと言う。
あっちもこっちも混乱していた。
それに付き合う私と主人はとにかく大変だった。
とにかく早くリフォームを終了させて、引っ越しを終わらせたい。
ただただそれだけを願っていた。